パトロンが欲しい

パトロン
連日、猛暑が続いていて、汗っかきの僕は制汗処理には気を付けている。
自分ではさほど気づかなくても、特に電車などに乗った時、他人の匂いは相当気になるからだ。おそらく、自分も同じくらい匂いをふりまいてしまっているのだろう。
「そんな時には、これです」
社長さんが取り出してきたのは、無愛想な小瓶に入ったデオドラントだった。
社長さんと呼んでいるが、僕より年下の女性だ。そして、文字通り社長である。
僕がいい制汗剤を探している時、クラウドファンディングで自社の制汗剤のスポンサーを探している彼女と出会った。
「パトロンが欲しいんですよね」
そう言って社長さんは冗談っぽく笑った。
宣伝費などが確保できないこともあって売れ行きはイマイチ。自分についてきてくれた二人の社員に給料も払わねばならず、かと言ってクラウドファンディングで投資してくれた方々に返すものもなく、お礼としてデートしてくれると言う。
際だった美人ではないが、社長だけあって利発そうな印象である。そして、何より彼女からはいい匂いがした。
抱いてみたいなと思っていると、彼女の方からホテルに行きませんか?と誘ってくれたので、願ったりと入室したところだ。
彼女を抱くと、確かにデオドラントが効いているのか、汗臭さはなく、むしろさわやかな香りが漂っていた。
だが、そのくらいの制汗剤はいくらでもある。商品の売りに弱いことは確かだ。
「いえ、この商品の本当の価値をお見せします」
彼女は、そう言うとパンツを脱いで、股間にデオドラントを振りかけた。そして、大股を開いて僕を誘った。
僕が股間に鼻を近づけると、彼女の陰毛に絡まった制汗剤が見事にマン臭を消していた。
「これをアピールしたいんですけど、さすがに表立って言えないんですよね」
パトロンが欲しい彼女は、こうやって自社製品の裏効用をアピールして賛同者を集めているそうだ。
僕は彼女に投資することは決めていた。決め手となったのは「次は男性用に取り組みたいので」の言葉だ。
チンコ専用デオドラントがあれば、自分でもめまいがする夏場のチンコの臭さも解消されることだろう。
円光
割り切りの意味